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2025.10.01
車のコーティングは施工環境で決まる ― 仕上がりを左右する理由
カーコーティングというと、多くの人が「どのコーティング剤を選ぶか」に意識を集中しがちです。確かにガラスコーティングやセラミックコーティングといった製品の性能は重要です。しかし、実際に仕上がりと耐久性を大きく左右するのは「施工環境」です。
同じコーティング剤を使っても、施工する場所や条件によって結果は大きく変わります。つまり、優れたコーティング剤を選ぶこと以上に、適切な環境で施工できるかどうかが重要なのです。
本稿では、なぜ施工環境が大切なのか、その具体的な要素と注意点について掘り下げていきます。
- 施工環境が重要な理由
コーティング剤は塗布してすぐに完成するわけではありません。塗装表面に均一に広がり、時間をかけて硬化する過程を経て初めて本来の性能を発揮します。このプロセスは外部環境に大きく左右されます。
- 温度が低すぎれば硬化反応が進まず、被膜が脆弱になる
- 温度が高すぎれば施工途中で乾いてムラになる
- 湿度が高ければ水分が反応に悪影響を及ぼし、白濁やシミの原因になる
- 砂埃や花粉が舞っていれば、仕上がりに異物が混入する
つまり、施工環境を整えずにコーティングをしても、カタログ通りの性能を引き出すことは不可能なのです。
- 温度と湿度の影響
2-1. 温度の適正範囲
コーティング剤の多くは、施工適正温度が 15〜25℃前後 に設定されています。この範囲であれば溶剤が安定して揮発し、被膜が均一に形成されやすくなります。
- 低温(10℃以下):硬化反応が遅れ、いつまでも拭き取りが終わらない。完全硬化しないまま使用すると耐久性が大きく低下。
- 高温(30℃以上):塗布した瞬間に溶剤が揮発し、拭き取りが追いつかずムラが残る。
2-2. 湿度の管理
湿度は 50〜70% 程度が理想です。湿度が高すぎると水分が化学反応に干渉し、白濁や斑点が発生することがあります。逆に乾燥しすぎると静電気でホコリを引き寄せやすくなり、仕上がりに微細な異物が残ることもあります。
- 施工場所の条件
3-1. 屋外施工のリスク
青空駐車場での施工は、最も避けたい環境です。直射日光でパネルが熱を持ち、ムラや焼き付きの原因となります。風で飛来する砂埃や花粉も塗装面に付着し、被膜に混入してしまいます。また、施工中に急な雨が降れば台無しです。
3-2. 屋内ガレージの利点
理想は密閉性のあるガレージや施工ブースです。直射日光や風雨を遮断でき、温度や湿度の管理もしやすくなります。最近では専用のコーティングブースを備えるショップが増えており、エアフィルターで空気中の埃を減らすなど徹底した環境管理を行っています。
3-3. 簡易テントやカーポート
自宅でDIY施工をする場合でも、せめてカーポートやテントを使って直射日光を避ける工夫は必要です。また、施工中は風の強い日を避け、できれば朝や夕方など外気温が安定している時間帯を選ぶのが望ましいでしょう。
- 照明の重要性
コーティング施工では、肉眼でムラや拭き残しを確認する作業が不可欠です。自然光は安定せず、角度によっては見落としが発生します。そのため、施工環境には専用のLED照明や蛍光灯を配置し、光を塗装面に反射させて細かく確認する必要があります。
プロの施工ブースでは、パネルに対して斜めから光を当てる「検査照明」を用い、わずかな拭き残しや傷も見逃さない工夫がなされています。DIYの場合も、最低限ポータブルLEDライトを用意するだけで仕上がりの精度が格段に上がります。
- 硬化中の保護環境
コーティングは塗布後すぐに完全硬化するわけではありません。一般的に 初期硬化に数時間、完全硬化には数日〜数週間 かかります。この硬化期間中に雨や埃にさらされると、仕上がりに大きなダメージが生じます。
- 硬化直後の雨 → 水シミが固着し除去困難に
- 鳥フンや花粉 → 被膜が柔らかいうちに浸食し跡が残る
- 強い風 → 埃が付着してザラついた仕上がりに
そのため、施工後はできるだけ屋内で保管することが理想です。
- DIY施工で環境を整える工夫
プロのような専用ブースはなくても、DIY派ができる工夫はいくつもあります。
- 曇りの日や気温が安定した早朝・夕方を選ぶ
- カーポートや簡易テントで直射日光を避ける
- 風の強い日は避ける
- LEDライトを活用して仕上がりをチェック
- 施工後は最低24時間、雨に当てないよう管理する
このような環境づくりを意識するだけで、DIY施工でもプロに近い仕上がりを実現することができます。
- 施工環境と下地処理の関係
施工環境はコーティングそのものだけでなく、下地処理の段階にも大きく影響します。鉄粉除去剤やコンパウンドは温度が高すぎると乾燥が早まり、磨き傷やシミの原因になります。逆に低温すぎると効果が発揮されません。
つまり、洗車から下地処理、コーティング施工までの一連の作業は、すべて環境条件を考慮して進める必要があるのです。
- まとめ ― コーティング剤より大切なもの
車のコーティング施工において、多くの人は「どの製品がいいか」を基準に考えがちです。しかし実際には、製品の性能以上に「どんな環境で施工したか」が仕上がりを決定づけます。
- 温度・湿度を管理する
- 屋外よりも屋内で施工する
- 専用照明で仕上がりを確認する
- 硬化中の保護環境を整える
これらを意識すれば、同じコーティング剤でも仕上がりは大きく変わります。逆に、環境を無視した施工では、どんな高級なコーティング剤も本来の力を発揮できません。
つまり「環境を制する者が、コーティングを制する」のです。製品選びと同じか、それ以上に施工環境を整えることこそ、愛車を長く美しく輝かせるための最重要ポイントなのです。